友よ 飲酒運転0の日まで 博多署白バイ隊員 坂本健さん(31)

「悲劇をもう繰り返させない」。

忘年会などで酒席が増える師走、福岡県警博多署の坂本健巡査長(31)は、亡き親友への誓いを胸に白バイを走らせている。警察官の採用試験に失敗し続けていたとき、親友が飲酒運転事故に巻き込まれて命を落とした。白バイ隊員の夢を応援してくれた友だった。この夏、念願を果たした坂本さんは、飲酒運転や悪質運転にひときわ鋭く目を光らせている。

 ひつぎの中の顔は赤く腫れ、痛々しかった。2004年秋、親友はバイクを運転中、中央線をはみ出してきたトラックと正面衝突し、即死した。現場は直線道路。運転手は酒を飲んでいた。

 親友は同い年で、大学時代のツーリング仲間。互いの部屋を行き来しては、夜遅くまでバイク談議に花を咲かせた。就職活動が近づき、白バイ隊員になりたいと話すと、「正義感強いけん、むいとるよ」と励ましてくれた。

 だが、福岡県警の採用試験に合格できず、民間企業に就職した。働きながら、さらに2度の挑戦にも失敗。白バイ乗りの夢を諦めかけていたとき、友の事故死の知らせが届いた。

 葬儀は今も忘れられない。ひつぎの前で泣き崩れる家族や恋人。理不尽な死を誰もが受け入れられなかった。「こんな思いは誰にもしてほしくない。絶対に白バイ隊員になって、飲酒運転がなくなるまで取り締まってやる」。冷たくなった友に誓った。翌年脱サラし、試験勉強に専念。仕切り直しとなった06年春の採用試験に合格し、24歳で警察官になった。

 白バイ隊は人気が高く、隊員になるのは狭き門。希望し続けたが、チャンスはなかなか回ってこない。警察官拝命から8年目の今年、若手署員の意見発表会で、初めて親友の事故死について語った。それが上司の目に留まり、今年の夏、隊員に抜てき。20代前半で隊員になる者が多い中、「遅咲きの白バイ隊デビュー」(署幹部)となった。

 「人を殺したらどうするんだ!」。飲酒運転で摘発したドライバーにはつい語気を強めてしまう。悲惨な事故は後を絶たず、飲酒運転もなくならない。だからこそ、徹底的に取り締まり、飲酒運転をすれば必ず捕まると意識させるしかない。そう考えている。

 白バイで寒空を駆けながら時々友に語りかける。「頑張っとるよ、見守ってくれ」

西日本新聞朝刊=